秋の自然光が入る無人の和室で、木の机に家・墓・仏壇の役割を分けて考えるための白紙の束を3組、無地の封筒、予定帳、実家の鍵、石の文鎮を並べ、背景に閉じた木製の仏壇を置いた横長の写真調イメージ。
記事内容をもとに生成したイメージです。実在の場所・人物を撮影したものではありません。

結論

遺言には、家と一緒に墓や仏壇も「長男に相続させる」と書けばよいですか。

宗派・寺院・地域で扱いは違います。家や預貯金と、墓・仏壇など祭祀に関するものを同じ分配欄へ混ぜないでください。遺言では祭祀を主宰する人の指定を別項目にし、墓地名義や仏壇の移動は別の確認表へ分けます。保管証書遺言は2026年9月6日時点で未施行です。文案は法律専門家へ、扱いは最後は菩提寺に確認してください。

墓と仏壇は、家・預貯金の分配欄へ混ぜない

遺言に墓と仏壇を書くなら、家や預貯金を誰に取得させるかとは別の項目にする。宗派・寺院・地域により実際の扱いは違うが、民法の入口がそもそも別だからである。家・土地・預貯金は相続財産として分ける。墓や仏壇など祖先の祭祀に関するものは、誰が祭祀を主宰するかという線で考える。

民法第897条は、系譜、祭具、墳墓の所有権について、同法第896条の相続財産とは別に扱う。亡くなった方による指定があれば、その指定された人が承継する。指定がなければ慣習に従い、慣習が明らかでない場合は家庭裁判所が定める。条文は「長男が継ぐ」とも、「法定相続分で分ける」とも書いていない。

ただし、家にある物を見ただけで全部を祭具と決めつけることはできない。仏壇や位牌は祭具として扱われ得る一方、仏壇の引き出しに入っていた現金や預金通帳まで祭祀に関するものへ変わるわけではない。美術品としての価値がある物など、個別判断が必要な場合もある。相続放棄と墓・仏壇を別に扱う理由でも、この二本の線を民法897条から整理している。

意外なのは、遺言に同じ家族の名前が並んでも、役割が同じとは限らないことだ。実家を取得する人、祭祀を主宰する人、遺言の内容を実現する遺言執行者は、別々に置ける。反対に同じ人が兼ねることもある。誰が何をする人なのかを混ぜると、亡くなった後に「墓も家も全部あの人の負担なのか」という争いを生む。

分ける項目遺言や別紙で決める内容確認先
家・土地・預貯金誰が何を取得するか弁護士、司法書士、公証人など
祭祀を主宰する人誰を指定したいか法律専門家と本人になる方
墓地と仏壇の実務名義、所在地、移動、連絡先墓地管理者と菩提寺
遺言の執行誰が遺言内容を実現するか法律専門家

この表は遺言文案のひな型ではない。祭祀を主宰する人の指定方法、特定の仏壇や墓地使用権が民法897条の対象になるか、遺言執行者へ何を任せるかは個別事情で変わる。文章をそのまま写さず、家族関係と財産を示して法律専門家へ確認してほしい。

保管証書遺言は2026年9月6日にはまだ使えない

保管証書遺言は、2026年6月24日に創設する法律が公布されたものの、2026年9月6日時点では未施行である。参議院の議案審議情報によると、「民法等の一部を改正する法律案」は2026年4月3日に提出され、6月17日に参議院本会議で可決された。6月24日に令和8年法律第45号として公布されている。

成立した法律は、普通の方式の遺言に「保管証書」を加える。新設される民法第968条の2では、証書への署名または法務省令で定める代替措置、原則として遺言書保管官の前で遺言全文を口述すること、法務局での保管が効力の条件になる。口述できない場合の通訳人による申述や自書、財産目録に関する特則も置かれている。自宅で文書ファイルを作り、保存ボタンを押せば完成する制度ではない。

保管証書遺言を「電子遺言」とだけ呼ぶのも正確ではない。成立した法律は、紙の書面保管証書遺言書と、電磁的記録による電子保管証書遺言書の両方を定義している。詳しい作成方法には、施行までに整えられる法務省令なども関わる。

施行日はまだ決まっていない。附則第1条第3号は、保管証書遺言の創設規定を「公布の日から起算して三年を超えない範囲内」において別に定める日から施行するとしている。e-Gov法令検索の改正履歴に出る2029年6月23日は、その三年という期限の上限を示す日であり、確定した施行予定日ではない。

2026年9月6日の現行民法第967条が挙げる普通方式は、自筆証書、公正証書、秘密証書の三つである。法務局には現行の自筆証書遺言書保管制度があるが、新しい保管証書遺言とは別の仕組みだ。「新方式を待てばよい」と作成を止める理由にはしないほうがよい。今使える方式と要件は、法律専門家または法務局に確認する。

新しい方式が増える良さと、残る一つの注文

保管証書遺言の良い点は、遺言を残す手段が紙一択でも電子一択でもなくなる方向を、成立した法律が示したことである。高齢化が進む中、全文自書の負担だけで遺言を諦める人に別の入口が増える。法務局での保管と、原則となる口述またはその代替手続きを組み込んだ点も、作成者の意思と保管場所を後から確かめる仕組みとして筋が通っている。

その上で、注文したい点が一つある。制度名の説明だけでなく、「遺言の方式」と「遺言に何を書くか」は別問題だと、同じ大きさで案内してほしい。新しい方式で作っても、家の取得者と祭祀を主宰する人を一行へ混ぜれば、家族の役割は曖昧なまま残る。遺言は、菩提寺の電話番号や墓地使用許可証の置き場所まで自動で家族へ渡す連絡帳ではない。

私がまだ迷っているのは、親が祭祀を主宰する人の名前を早く書くことが、家族を本当に楽にするのかという点である。名前が決まれば手続きは速い。しかし、頼まれる方が引き受ける内容を知らなければ、遺言の一行が一方的な当番表にもなる。私は、承継者の確定を急がせるより、候補の方へ墓地名義、法要、仏壇の置き場所を説明する日を先に決めるほうがよいと考える。これは法律の結論ではなく、実家じまいと同じ机で考える不動産業者としての意見である。

磐田市営墓地は、遺言とは別に承継届を出す

磐田市営墓地では、遺言に祭祀を主宰する人を書いても、市への承継届が自動で済むわけではない。磐田市が2026年8月4日に更新した市営墓地ページには、「共葬墓地使用権承継届」と「共葬墓地使用者住所等変更届」が別の様式で掲載されている。

たとえば磐田市西貝塚の緑ケ丘霊園を含む市営墓地なら、遺言の有無とは別に、環境課生活環境グループへ必要書類を確かめる。寺院墓地なら窓口は菩提寺になる。共同墓地なら地域の管理者が関わる場合もある。墓の名義変更をしないとどこで止まるかで整理したとおり、法務局の登記と墓地使用者の届出は同じ手続きではない。

菩提寺へは、遺言の内容を判定してもらうのではなく、寺の台帳と実務を聞く。①現在の墓地使用者名義、②承継届の書式、③承継する方に求める確認、④案内を送る住所、⑤仏壇や位牌を移す場合の連絡時期。この五つを、故人または遺言を準備する親の氏名と墓地の場所を伝えて確認する。費用や作法は寺ごとに違うので、一般的な相場で埋めない。

菩提寺そのものが分からない家では、遺言の本文へ推測した寺名を書かない。会葬礼状、寺からの封筒、墓地書類を探し、分かったことと未確認のことを分ける。磐田市で菩提寺を探すために残す1枚に、寺名を断定する前の確認順を載せている。

仏壇は、誰が引き取るかだけで終わらない。本尊、位牌、過去帳をどう扱うか、移動前に連絡が要るかは宗派と寺により違う。仏壇本体と中にある物を一箱として処分しないため、仏壇・位牌の記事一覧で確認する項目を分けてほしい。

今日作るのは、遺言・連絡メモ・確認先の三列

2026年9月6日に遺言、墓、仏壇を整理する家族が今日作るものは、完成した遺言書ではなく、法律専門家へ見せる下書き、家族へ渡す連絡メモ、次に確認する相手の三列である。A4の紙を横に使い、分からない欄には「未確認」と確認日を書く。

  1. 遺言の列。家・土地・預貯金を誰に取得させたいか、祭祀を主宰する人として誰を考えているか、遺言執行者を置きたいかを別々の行にする。本人になる方へまだ話していなければ、その事実も書く。候補の方が遠方なら、墓参りと寺からの郵便を誰が担うかも別の行にする。
  2. 連絡メモの列。菩提寺名、墓地名、現在の使用者、墓地使用許可証の原本、仏壇・位牌・過去帳の場所を記す。法的な文案と混ぜず、更新できる紙にする。
  3. 確認先の列。遺言の方式と文案は法律専門家または法務局、家の名義は司法書士、墓地台帳と仏壇の扱いは墓地管理者と菩提寺、と担当を置く。

遺言を書く日を、墓じまいまで決める日にしなくていい。決めるのは、誰が次に確認するかまでで足りる。墓を残すか、仏壇を移すか、家を売るかは、同じ日に結論を出さなくてもよい。決めない自由を放置に変えないため、次の電話と書類の場所だけを残す。

家、墓、仏壇、菩提寺の情報を一枚から育てるなら、実家カルテへ移せる。遺言書の原本を家族全員が見られる場所へ置くという意味ではない。原本の保管先と、連絡を受ける方だけを家族がたどれる状態にする。

私はこう案内する。保管証書遺言の施行を待つ前に、何を遺言で決め、何を家族の連絡表へ残し、何を寺へ聞くかを分ける。遺言の方式・効力・文案は弁護士、公証人、司法書士などへ確認してほしい。墓地の名義、承継条件、仏壇や位牌の移動、法要、費用、作法は宗派・寺院・地域で違う。最後は菩提寺に確認してください。

FAQ

よくある確認

墓や仏壇は遺言に書くべきですか。

家や預貯金と同じ分配欄へ混ぜず、祭祀を主宰する人を指定したい場合は別項目として法律専門家に文案を確認してください。民法897条の対象になる物と、仏壇の中の現金など通常の相続財産は分けます。墓地名義や仏壇の移動は別手続になるため、最後は菩提寺に確認してください。

長男以外を墓や仏壇の承継者にできますか。

民法897条は長男と定めず、被相続人の指定があれば、指定された人が祭祀を主宰するとしています。ただし、指定される方への説明と意向確認、墓地使用規則、寺への届出、家族内の費用分担は別の問題です。遺言の効力は法律専門家へ、墓地と仏壇の扱いは最後は菩提寺に確認してください。

保管証書遺言は2026年9月に利用できますか。

利用できません。令和8年法律第45号は2026年6月24日に公布されましたが、保管証書遺言の創設規定は9月6日時点で未施行です。施行日は公布から3年以内の日として別に定められます。現在使える方式は法律専門家や法務局へ、墓・仏壇の扱いは最後は菩提寺に確認してください。

Links

あわせて読む

Sources

出典・確認先

  1. 参考 参議院「民法等の一部を改正する法律案」(第221回国会・閣法第43号)

    2026年4月3日提出、5月26日衆議院可決、6月17日参議院可決、6月24日公布、法律番号45を確認。指定ページはHTTP 200。2026年9月確認

  2. 参考 参議院「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号・成立法律PDF)

    民法968条の2・968条の3の新設、紙と電子を含む保管証書遺言書の定義、附則1条3号の施行時期を確認。2026年9月確認

  3. 参考 e-Gov法令検索「民法」

    現行の民法897条と967条を確認。現行967条の普通方式は自筆証書・公正証書・秘密証書の3方式。2026年9月確認

  4. 参考 e-Gov法令検索「法務局における遺言書の保管等に関する法律」

    現行の自筆証書遺言書保管制度と、新しい保管証書遺言書に関する改正前の条文を確認。2026年9月確認

  5. 参考 e-Gov法令検索API「民法の改正履歴」

    保管証書遺言を創設する改正の状態が未施行であることを確認。表示される2029年6月23日は施行期限の上限で、確定施行日ではない。2026年9月確認

  6. 参考 磐田市「市営墓地」

    共葬墓地使用権承継届と共葬墓地使用者住所等変更届が別様式であることを確認。ページ更新日は2026年8月4日。2026年9月確認

制度・金額・期限は変わります。相続、税、登記にかかわる個別の判断は、税理士・司法書士などの専門家と菩提寺にご確認ください。 本記事は一般的な情報であり、特定の寺院・家・土地についての判断ではありません。

大石浩之(磐田市/不動産業・宅地建物取引士)の顔写真

この記事を書いた人

大石浩之(磐田市/不動産業)

富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役/宅地建物取引士

磐田市で実家じまい・相続・空き家の相談を受けています。菩提寺や墓の話は、家をどうするかの相談と必ず同じ場に出てきます。 その現場で見たこと・聞いたことを、判断できるところとできないところを分けて書いています。

ATAWI TEMPLE の運営者情報大石浩之のプロフィール編集方針